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scene:04《鶴の一声と冷たい空気》
「最近の高校生はせっかちだなぁ…今から生き急いでどうすんだ」
のんびりした口調で言って、二つ目のサンドイッチに手を伸ばす祐さんに、オレはヒョイと肩を竦めた。
「…“最近の高校生”とか発言するあたり、もう立派なオッサンですよね、祐さん。さすが、三十路──痛っ!」
すかさず祐さんの手がカウンター越しに伸びてきて、額を弾かれた。
「…ったく、どいつもこいつも…。30歳をオッサン扱いすんなっつーの!」
憤慨しながら、祐さんがサンドイッチを頬張れば、オレの傍らで珈琲を淹れていた誉さんが、祐さんにカップを差し出しながら、ポツリと呟く。
「…高校生から見れば、30は充分オッサンだろ」
「誉くん? オーナーにそんな口きいていいのかな~?」
そう言って、祐さんが意味ありげな視線を向けた途端、誉さんの目元に、サッと刷毛で掃いたような赤みが差した。…緑がかった黒い瞳に、陶磁器みたいな白い肌。少し、日本人離れした特徴のある誉さんだから、そんな些細な赤みも、よりいっそう際立ってしまい、見てるこっちが、何だかいたたまれなくなってくる。
──…やれやれ、だな。
オレは小さく肩を竦めてから、声をかける。
「…誉さんも、休憩入ってきたらどうですか?」
“こっちはオレ1人でも大丈夫です”と続けて、誉さんを半ば強引に休憩に入らせると、オレはカウンター前からスタッフが離れたタイミングを狙って、祐さんを、呆れ混じりにジロリと睨む。
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