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scene:04《鶴の一声と冷たい空気》
「…あの、いちゃつくなら、家でやってもらえますか」
12月に、誉さんが長い休暇を取った後、この2人に何があったのかは知らないが、祐さんと誉さんは“兄弟”という関係から変化したらしい。
…まあ、オレも似たようなものだから、兄弟だとか男同士だとかってことに、偏見はないんだけど──正直、祐さんのデレッデレぶりには、ちょっと引く。
少しはオーナーらしく、シャキッとしてもらいたい…と思いながら注意すれば、サンドイッチの最後の一切れを頬張った祐さんが、ニヤリと笑う。
「ああ、悪い。…つい、幸せがだだ漏れちまうもんで」
「………」
──こんなに大人げない30歳って、初めて見た。
そう思ったのが顔に出ていたのか、祐さんが苦笑した。
「…いや、これでもオレは、堂園には感謝してるんだけどな」
そう言った祐さんの表情に、思い出すのは──数か月前のことだ。
仕事の休憩中、スタッフルームにひょっこり顔を出した祐さんと話してる時、オレは偶然、祐さんの鞄の中に、媚薬が入っているのを見てしまった。
まぁ、それだけだったら、普段のオレなら適当に受け流すか、見なかったフリをする。…けど、祐さんの持っていた薬が、値段の割に、効果があまり持続しない粗悪品だということを知っていたから──つい、余計なおせっかいを焼いてしまった。
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