scene:04《鶴の一声と冷たい空気》

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scene:04《鶴の一声と冷たい空気》

   『それ、効き目弱いっつーか、あまり効果続かないから、こっちも使った方が上手くいきますよ。──まあ、無理矢理はダメですけど』  そんなことを言って、逆ナンしてきたオンナに持たされていた、媚薬入りのジェルを渡してしまったのだ。──それを、祐さんが誰に使うつもりなのかを、確かめもしないで。  そして、翌日。バイトに来たオレが目にしたのは──蒼白な顔をして、頻りに腰を気にしていた誉さんの姿だった。  足元に冷たい空気がまとわりついたような、嫌な予感。  『誉さん…具合悪いなら、帰ったらどうですか』  “いや、まさかな…”と思いながら声をかけたオレに、誉さんは青白い顔の下に微妙な警戒心を滲ませながら、こう言った。  『何でもない。──昨日は、オーナーの引っ越し祝いがあったからな。飲みすぎて、ちょっとダルいだけだ。…気にすんな』  言葉通り“何でもない”フリをして、グラスに水を注ぐ誉さんを見て、予感は確信に変わった。  ──ああ、やっぱりか…。  前日のスタッフルームでの、祐さんとのやり取りが脳裏をよぎり、オレは激しく後悔した。  あの日のことを思い出し、胸の中で誉さんに何度目かの土下座していれば、祐さんが遠い目をしながら、しみじみ呟く。
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