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scene:01《薄紫の闇と忍び寄るライオン》
──この世には、いったいどれだけの双子が存在するのだろうか。
同性か、異性か。一卵性か、二卵性か。…双子にも色々あるが、必ず付きまとうのは、いわゆる“双子ならではの神秘”ではないかと思う。
テレパシーかシンパシーかは知らないが、それの存在を期待混じりに問われるたび、僕は、吐き捨てたいような気持ちになる。
一卵性の双子として生まれたからといって、お互いの全てを理解しているわけじゃない。
むしろ“双子”は、ただ血が近しいだけの、“他人”に過ぎない。
そのことを、僕に痛いほど知らしめたのは──堂園真紘。
僕…堂園颯希の、双子の弟だ。
† † †
明日から冬休みに入る、12月末。私鉄に揺られながら、車窓を流れる、クリスマスモードに浮かれた街並みを眺めていれば、制服のブレザーのポケットの中で、携帯が震えた。
──もしかして。
フワリと色づいた花のような期待で、携帯を取り出してみれば──そこには、僕の期待を微妙に裏切る名前があった。
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