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scene:04《鶴の一声と冷たい空気》
「まったく…何で、あんな風に育っちまったんだろうな、密は。将来が心配でしょうがない」
「…元凶が何を言ってる」
祐さんが苦笑混じりに呟けば、匠さんが混ぜ返した。
「………」
──どうしよう。正直に自白するべきだろうか。
いや、でも、言ったオレだって忘れてたような、適当すぎるアドバイスを、未だに続けているだなんて、誰も思わないだろう。──やっぱり、密はアホだ。アホ決定。
「…密の将来が心配にならないように、学校では、オレが責任もって注意しておきます」
そう言いながら、オーダーの抹茶ラテとクランベリージュースを出せば、匠さんが、表情の動かない顔に微妙な苦笑いを浮かべて頷いた。
「…よろしく頼む。じゃあ、8番にオーダー運んでくる」
「お願いします」
テーブルへ飲み物を運んでいく、匠さんの広い背中を見送っていれば、いくらか冷めた珈琲を飲み干した祐さんが、無言でカップを持ち上げ、おかわりを要求してきた。
「…え、オレでいいんですか?」
オーナーである祐さんが来た時に出す珈琲は、必ず誉さんが淹れているのに──そう思って確認すれば、祐さんはフッと薄く笑った。
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