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scene:01《薄紫の闇と忍び寄るライオン》
久我原密。
それは、白鳳学院の中等部で出逢った、僕と真紘の、唯一と言っていい、共通の友人の名前だ。高2になり、再びクラスメイトになった密からのLINKを、ほんのり苦笑しながら確認すれば…。
“お祓いには、何が効く?”
「………」
電車の中だというのに、思わず唸りそうになった。
──これは、もしかして禅問答だろうか。
街も人もクリスマスムードに盛り上がる中で、僕に禅問答を仕掛けてくるとは──やはり、密はひと味違う。
感嘆のため息をつきながら、僕は返信を打ち始める。
“十字架に朝日、あとはニンニクかな”
お祓いとは違うかもしれないが、クリスマスも近いことだし、西洋風に吸血鬼の苦手な物を答えて返送すれば、すぐに密から返信が来た。
“やっぱり、颯希は頼りになる”
「………」
──あれ? 禅問答じゃなかったのか?
疑問に思いながら首をひねれば、私鉄のアナウンスが最寄り駅の名を告げる。僕は急いで意識を切り替えると、携帯をしまいながら降車し、駅前にある本屋へと一目散に走った。
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