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scene:01《薄紫の闇と忍び寄るライオン》
──もともとは、お前と同じ顔だろうが。
そう言い返してやりたい気分を苛立ちと一緒に飲み込み、静かに切り出す。
「…お前、どういうつもりだよ。新川と、なんて」
そう切り出した途端、真紘が目を瞠った。
「ああ…見たんだ?」
「“見たんだ?”じゃないだろ! 新川が彼氏持ちだってこと、知ってるよな!?」
のらりくらりとした態度の真紘に詰め寄ると、真紘はかったるそうに天井を向き、視線をくるりと巡らせた。
「あー…確か、笹岡だったっけ。オレと同じクラスの」
「わかってるなら、何でこんなこと…っ!」
「──颯希の言い方だと、オレが100%悪いみたいだよね」
真紘がペットボトルに口をつけてから、また僕の方を見て、クスリと笑う。
──真紘の、この、クスリと笑う表情。
何を考えているのか、得体が知れない笑みに、なぜか、右側の首筋に悪寒が走る。
ザワリと皮膚が粟立つようなその感覚に、僕は思わず手のひらで首筋を強く拭った。
【scene:01 End】
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