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「もう止してよ。秘密よ! 部屋は掃除したし、シーツも布団も新しい物を用意したから、自分の部屋だと思って好きに使ってちょうだい。ただし、私の青春の後を探すのは止めてちょうだいね」
私は未練がましく机を見つめ、しかし、雪絵お姉さんのためにイニシャルを探すのは諦めて、自分の荷物をこの部屋に運ぶ事にした。
私は部屋を出て、キィキィ廊下を鳴らせながら、まだ部屋の中にいる雪絵お姉さんの「荷物は居間に置いてあるからぁ!」と叫ぶ声に、「はーいっ!」と返事をした。
それにしても、音の鳴る廊下の事といい、あの部屋の事といい、久し振りに来たと言う事もあるけれど、この家の中がどうなっているのか私はあまり知らなかったのだと気付かされた。
そう言えば、今回も合わせて私は数回しか此処に来た事が無い。
私が覚えている限りだと、過去に四回くらいか……それも、家族と一緒に数時間お邪魔しただけで、明るい内に帰った様に思う。
二年前に来た時も直ぐに帰った気がする。
泊まるのは今日が初めての事だ。
今さらながら、私は何故ここに一人で泊まりになんて来たのだろうかと自身に問い掛けたが、恐らくはただの気紛れだろうと答えを出して居間へと進んだ。
居間に着くと、私は自分の荷物を探した。
しかし、探しても、探しても荷物は見つからない。
雪絵お姉さんは私の荷物を一体何処に置いたのか?
そう言えば、さっき居間でくつろいでいる時にも私は自分の荷物を見ていない。
これは雪絵お姉さんに聞きに行った方が良いかも知れない。
私は居間から出て、雪絵お姉さんのいる部屋へ向かおうとした。
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