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「おかっぱ頭じゃなくてボブヘアーだよ」
私が訂正すると雪絵お姉さんは、「あら、そう」と言って笑った。
「早紀ちゃん、おばあちゃんに挨拶してらっしゃい。その後で、早紀ちゃんの使う部屋を案内するわ。おばあちゃんの部屋、分かるわね?」
おばあちゃんの部屋は、確か、玄関から伸びる、この廊下の突き当たりのはずだ。
私は、「うん」と返事をして、廊下を進んで行った。
おばあちゃんの部屋の前まで来て、私は鼻からスウッと息を吸った。
お線香がおばあちゃんの部屋から薫っている。
これは白檀の香りだと、いつだったか雪絵お姉さんが教えてくれた。
私はこの香りが好きだ。
「おばあちゃん、早紀です。入って良い?」
私は、襖越しにおばあちゃんに声を掛ける。
「あらまぁ、早紀ちゃんかい? どうぞお入り」
おばあちゃんがそう言うのを聞いて、私は静かに襖を引いた。
開いた襖から、煙が廊下へ、スィーッと流れて行く。
お線香の煙だ。
「早紀ちゃん、遊びに来てくれたのかい?」
おばあちゃんが、白髪の多い髪に挿したかんざしを片手で直しながら言う。
「うん、まぁ、そうです」
答える私の声を聞いて、おばあちゃんはニヤッと笑顔を作ると、部屋の中にある仏壇の前にちょこんと座ったまま、私を手招きした。
私はおばあちゃんの側まで行くと、おばあちゃんに進められて、おばあちゃんの正面に置かれたオレンジ色の座布団に正座をして座った。
私が座ると、おばあちゃんは直ぐに話し出した。
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