壱ノ不思議 廊下の怪

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 この部屋には家具も何も無く、ただの部屋と言うのがふさわしい。  けれど欄間には木彫りの美しい花の彫刻が施してあり、それが私を浮かれた気持ちにさせた。  私達は控えの間の、入って来た襖の右側にあるもう一つの襖を開けて、廊下へ出た。  この廊下は、さっき通ったおばあちゃんの部屋へ続く廊下の向かい側にある。  この廊下へは控えの間を通らなければ出る事は出来ない。  縁側に続いていて窓もあるので、さっきの廊下に比べて明るかった。  前に遊びに来た時に、ママだったか、雪絵お姉さんだったか、この家の廊下はアルファベットのHに似ているのだと教えてくれた。  確かに紙の上にHと書いて考えてみたらイメージしやすい。  Hの真中にある横の線が中の廊下と呼ばれる。  それを挟んだ左側の縦線がおばあちゃんの部屋へ続く廊下で、その反対側の右の縦線が、今、私達がいる廊下になるのである。 ちなみに中の廊下にはおばあちゃんの部屋へ向かう廊下からは行くことが出来ない。  Hの左の縦線と真中の横線との間は壁があり、こちら側の廊下からで無ければ中の廊下へは行けない造りになっているのだ。  そのHの廊下を取り囲む様にして各部屋がある。  その数、十二部屋。  ちなみに、Hの真中の線の下、左側のHの線と、右側のHの線に挟まれた空間に玄関と控えの間がある。  兎に角、説明するのが面倒になるほどに入り組んだ造りの家なのだ。  居間に着くと雪絵お姉さんが用意してくれた冷たいお茶で喉を潤し、お土産に持って来たお菓子を食べてくつろいだ。
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