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「逃げて来たって、嫌な言い方ね。逃避行したの! 田舎のおばあちゃんの所へ行くからごめんねって言えば皆んなだって仕方無いって思ってくれると思うし、ここにいる間は誰も遊びに誘って来ないじゃない?」
雪絵お姉さんは私の台詞に大爆笑した。
「早紀ちゃん! ハハッ。あなた、逃避行って! 何処でそんな言葉覚えたのっ! フフフッ。良いわよ、ゆっくり逃避行して行きなさいよ! フフフフッ!」
「ひどい! そんなに笑わないでよ!」
「ごめんなさい。でも、そんな理由で、こんな田舎に二年振りにやって来るなんてね。フフフッ。でも、何となく分るわ、その話。私にも身に覚えがあるし、あなたくらいの年頃の女の子には逃げ出したくなっちゃうくらいの悩みなんでしょうね。さぁ、十分涼んで笑った事だし、早紀ちゃんの使う部屋を案内しましょうか」
雪絵お姉さんは立ち上がると居間の襖を開けた。
蝉がジーワジーワと鳴く声と、夏の生温い風が居間に入って来た。
私はむくれた顔をして、居間から出ようとする雪絵お姉さんの後についた。
しばらく廊下を歩く。
角を曲がり、足を進めると、キィッと廊下が音を立てた。
歩く度に廊下はキィキィ音を立てる。
さっきまでも、廊下は歩く度に音を立ててはいたけれど、これほどでは無かった。
角を曲がってから、やたらと廊下を踏む音が大きい。
そればかりか廊下は歩く度に少ししなって、私は廊下が抜けるんじゃ無いかとドキドキした。
「久し振りに来たから忘れてしまったのかしら? この廊下はね、わざとこうやって作っているのよ。踏むと音を立てる様にね」
雪絵お姉さんが振り返り、私に説明してくれた。
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