雨の日の記憶

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「園長先生! 大変です!」  先生の一人が、慌てた様子でやってきた。 「どうしたの?」 「さっき、近くで事故があったみたいなんですが、ヒロくんのお母さんが言うには、みっちゃんのお母さんじゃないかって──、みっちゃん!」  それまで、私の存在に気付いていなかったのだろう。先生は、ハッとしたように口元を押さえた。 「おかあさんが、どうしたの?」 「えっ……、その……」 「おむかえにきたの?」 「……」  押し黙ったままの二人を見て、何かが起きたことを悟った私は、裸足のまま外へと飛び出した。 「みっちゃん!」 「行っちゃダメよ!」  先生たちの静止の声を振り切り外へ出ると、辺りはもう薄暗くなり始めていた。  雨の音に混じって、救急車の音が聞こえてくる。私はキョロキョロと音の聞こえる方を探し、そちらの方へと走っていった。  
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