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進んでいくと、見覚えのある車が1台停まっていた。いや、正確には『壁にぶつかって』停まっていたのだ。
救急隊員たちが、地面に寝ている人を担架に乗せようとしている。その時、チラリと顔が見えた。
「おかあさん!」
私はおもわず駆け出していた。
お母さんは、保育園で別れた時のままの格好をしていた。違っていたのは、服の色。あちこち真っ赤になっている。
さらに、頭には白い布が巻かれていて、それも赤く滲んでいた。
「おかあさん! おかあさん!」
「あ! お嬢ちゃん、ダメだよ!」
救急隊員が、慌てて私を止めた。
「おかあさーん!」
近付かないように抱き押さえられながらも、私は必死に呼び掛けた。だが、閉じられた目は開く事は無かった。
お母さんが救急車の荷台に乗せられ、バタンと扉が閉められる。
私を抱き押さえていた救急隊員のお兄さんが、頭を撫でながら優しい声で言った。
「大丈夫だよ。お医者さんの先生が助けてくれるから、お家で待ってなさい」
その後、私を追ってきたヒロくんのお母さんと園長先生に預けられた私は、ピーポーピーポーと音を鳴らしながら去っていく救急車を呆然としたまま見つめていた。
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