婚約者

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「ねえ、街コンのときのこと覚えてる?」  彼女が話しかけてきた。 「もちろん。覚えているよ」 「バス会社なのに、なぜか日帰りクルーズの街コンの企画だったね。男女それぞれ150人ずつで、そのときたまたま隣の席になったあなたとこうやって結婚になるなんて。私、あの日が初めての参加だったのに」 「それは僕も同じ。母親から行ってこいなんて言われていなかったら、絶対に行っていなかったから。これも縁だね」 「時間制で男性側がローテーションでぐるぐるメンバーを変えながら話を楽しむっていう企画だったけれど、300人も乗るには船が小さすぎて、私船内の熱気と船の揺れで船酔いしちゃったからあなたの後ほとんどデッキにいてあまり他の人と会話を楽しめなかったのよ」 「僕も同じ。今考えると無茶な企画だったね。あの後あの企画見ないから、不評だったんじゃないかな」 「私達、すごい奇跡だね」  僕は彼女の右手をつなぎながら言った。彼女も愛おしそうに握り返してくれる。 「でも、プロポーズしてから言うのも何だけど、僕でよかったの?正直、年齢だってすごく離れているし、大卒ってわけじゃないから同年代と比べても収入が良いってわけじゃない。何で僕といてくれることを選んでくれたの?」  僕は不思議そうに彼女に訊いた。 「そうねえ・・・実は私達、ずっと昔に出会ったことがあるの」  彼女は僕が信じられないようなことを言った。 「それ本当?僕には記憶がないけどなあ。どこかのイベントとかで会っているとか?」  僕は色々と思い出してみるが、やはり彼女のことを思い出せない。
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