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「全然そんなんじゃないわ。私からしてみたら、ドラマのような出会いをしているの。あなたは、私のヒーローなの」
彼女は嬉しそうに言った。
「えっと・・・ごめん。本当に思い出せない。それに僕がヒーローだって?」
僕は困惑した。
「思い出せないのもしょうがないわ。だってその時私まだ10歳だもの。あなたは、学校の帰り道に不審者に襲われそうになった私を助けてくれたの」
彼女の話を聞いて、僕の頭の中にやっと当時のことが思い出された。
あの日、たしか夏だった。取引先から帰る途中、あまりにも暑いから普段通る道じゃなくて、日陰の多い裏道を通ることにしたんだ。裏道を歩いていると、ランドセルを背負った女の子が急に裏路地へ吸い込まれていく姿が見えて、何かなと思って見に行くと、女の子が不審者に襲われかけていたんだ。
「思い出してくれた?」
彼女はにこっと微笑んだ。
「あの時、あなたが大声で『何をしているんだ!』って言ってくれたおかげで、不審者は逃げ出して私は助かったんだもの。しかも、警察や家に連絡してくれて、親とかが来てくれるまで怖い気持ちを落ち着かせようとしてくれた。それに、あなたがちゃんと不審者の特徴を警察に行ってくれたおかげで、犯人も逮捕されたの。あなたは、私を助けてくれた最高のヒーローだからあなたの顔絶対に忘れなかったのよ。だからね」
彼女は僕を抱きしめた。
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