婚約者

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「僕と・・・その・・・結婚してください」  5月下旬の夜、彼女を助手席に乗せて運転中、僕は付き合って1年半になる15歳下の彼女にプロポーズをした。 「やっと言ってくれたね。もちろん。喜んで」  彼女はにやにやしながら言った。というのも、僕たちはお互いの両親に5月上旬に結婚の挨拶をしていたにもかかわらず、プロポーズをしていなかった。付き合って1年ほどたった12月に彼女から「プロポーズはしてくれないの?」と言われていたのに。  まだ結婚を決めかねていたその時の僕は、「そのうちに」とだけ言ってはぐらかしていた。彼女の方は「あなたのペースでいいから」と言ってくれていたので、僕はその言葉に甘えてプロポーズをしなかった。  恋人として過ごすなら、元気で明るい彼女は最高だったが、僕と同様に家事全般が苦手だという彼女は結婚相手としては向いていなかった。  彼女も分かっていたのだと思う。彼女はその後苦手な料理などを頑張って作ってくれ、苦手分野である家事を身につけていった。結局僕は彼女の頑張りと胃袋を掴まれて結婚を決めた。  そして今日、夜景を見に彼女を誘ったときに言われてしまったのだ。「そういえば、結婚の挨拶に行ったのに、プロポーズしてくれていないよね?」と。  今まで好き勝手に40年生きてきた僕には信じられない話だが、僕は若い彼女をパートナーとして選べたこと喜びが体の底からあふれ出していた。  僕は夜景が見渡せる山頂の駐車場に車を停めた。夜景を見に行こうと僕から誘って来たわけだが、残念ながら山頂に着くなり天気予報でも言っていなかった雨が降り出してしまった。仕方なく僕たちは車内で雨がやむのを待つことにした。
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