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「今日はもっと約束をハッキリして貰いたかったんだけど………まあ、今日はしょうがないか。」
(約束なんて早い者勝ちだもんねぇ。満更でも無さそうだし、和田君はフェミニストって奴みたいだし、押せばイケる!!)
明日になれば、一緒に帰ったという事実に、追加で意味深にちょっとだけ改編したアレコレ加えて、彼女の座を揺るぎ無いものにしよう。
「ふぅ……ちょっとはしゃぎすぎて疲れちゃった。部活だって切り上げて休憩無しで来たんだしぃ。」
「ああ……そうだね。何か飲み物でも飲む?あ、公園に自販機有るから買ってくるよ。」
そっと腕を外そうとする玲一郎の動きを制止して、ニッコリと笑ってこう言った。
「私のジュースだったら自分で選ばせて?何があるか私も見てないと決められないよ?」
夜には早いけど、かなり人の少なくなった公園、自販機は入口から見えてるけど中身まではハッキリとは判らない。
「さあ、行こう♪ベンチでちょっと休憩してからでも、そこまで遅くならないって♪」
「…………仕方ないなぁ。」
ジュースなんて何でも良いのよ。
和田君を人目に付かないところに誘導できれば、女の子の証言の方が有利だもん。
ガコンと重たい音を立てて出てきたコーラを持って、いそいそと公園内のベンチに腰掛けた。
「ねぇ……こんな道から離れて良いの?結構街灯有っても、電球切れてたりで暗いよ?」
「良いの良いの。だって、自販機近くはベンチにジュース溢れてたら嫌だもん。」
目撃者が多いと、私の証言が嘘っぱちってバレちゃうもん。
「……………そう、なら良いんだ。」
コチラトシテモ、練習クライニハ、ナリソウダシナ。
「え?和……アが…ぁ」
ゴリッ!!
いつの間にか近寄っていた黒い大きな獣が、喉元に喰らい付いていた。
手元から空けたばかりのコーラが落ちて、地面でジュワジュワと音を立てた。
ゴリッ……バキバキッ……グチャグチャ……
………息が、出来ない。
痛い痛い痛い………直ぐに気を失いたいのに!!
和田君は何処!?
助けて、助けて……私……何で直ぐに死ねないの!?おかしいよ!!おか……
赤い水とコーラと合わさって、地面に真っ黒な水溜まりができた。
「ご馳走さま……という程でもないか。やはり、エサにも優劣があるな。」
ベロリと赤い口許を舐めて、二本脚で立った獣は人の言葉を話した。
「お疲れ様です、主様。やはり、これは口汚しで御座いましたか。」
「現代は監視カメラがあるからな、そこは慣れだろう。ここには無いようだが、上手い具合に死角に誘導できれば容易いな。」
「では、今後はその点も視野に入れます。申し訳有りませんが、これを。」
公園から大きな犬を連れた人影が目撃されたが、軽装であったため気にも止められず、何処かへ去っていった。
翌日、少女の捜索願いが出され、荷物と血溜まりは発見されたが、本人の行方は公園からプツリと消えてしまった。
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