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……昨日の妙な囁き声を思い出しちゃった。
あの時は何も思わなかったけど、あの女ってもしかして行方不明の子の事なの?
どうしよう、あれは誰だったんだろう!?
昨日遊んだメンバー!?
たまたま同じコーヒーショップに居た人が言ったの?
"……ﾁｯ、アの女、邪魔だナぁ。殺ルか?"
犯人が、私達と一緒の空間に居たの?
｢後藤さん、席に着きなさい。ホームルーム始まってますよ!!｣
先生が入ってきて、半田さん達はそれぞれ自分の席に戻ったのに、私は昨日の事が気になってずっと立ち尽くしていたみたい。
先生がいつまでも座らない私に気付いて、イライラと声を掛けてきた。
｢全く……浮わついてますよ!!えー、隣のクラスの女子生徒が昨日から家に帰っていません。事件に巻き込まれた可能性も有るのと、このクラスの男子生徒も関わっているということで、急遽該当の生徒は順次呼ばれます。授業中に抜けることも有りますが、事情聴取に協力をするように。尚、下校は一斉に、部活動も禁止で速やかに帰宅となります。寄り道はしないように。｣
担任の先生は、殺人の可能性を信じたくないのか、それともただの家出だろうと楽観しているのか、警察に学校を彷徨かれるのが迷惑そうだった。
それもその筈、テニス部といえば今年は結構順調に大会を勝ち進んで居るのよね。
不祥事なんて有ったら大会に出れなくなってしまう。
もしもただのフラれた腹いせの狂言なら、その子は部活の先輩の日頃の努力を潰したってことになるのよね。
でも、本当にとんでもない事件に巻き込まれていたらって思わないのかな?
いくらフラれたから……なんて噂が有っても、もうちょっと生徒の事を心配して欲しい、なんて思うのは私が自分勝手なのかな?
｢うざ……フリだけでも心配しろっての。｣
｢いちおー女子が行方不明なのはホントなんだし、気ぃ使えっての。｣
ああ、よかった、私だけの感想じゃないんだ。
ボソボソと小声で先生のおざなりな態度に、聞こえないようにツッコミを入れてるクラスメートも居た。
昼休み、放課後と過ごす内になんとなく耳に入ってきたけど、学校としては被害者も最後まで一緒に居たという重要参考人も、ウチの学生だったというのは外聞が悪いと。
いじめだの体罰どころか、下手すれば殺人事件だし、学校自体の存続とやらに関わるから対応に追われてなんチャラて言ってた。
｢後藤さん、君は昨日、コーヒーショップを出て、そのまま帰ったのかね?その時、揉めていたとか不審者がいたとか気付いたことを言いなさい。"事実を"順を追って警察の方に説明しなさい。｣
余計なことは言わないように。と無言の圧力を先生達に掛けられながら、私はビクビクと口を開いた。
先生、余計なことって、ふんわりとしたニュアンスで指示されてもどれが余計か判りません。
入室前に釘を刺されたけど、高校生にそんな高度な駆け引きの有る言葉選びを期待しないでよ。
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