後藤静香side~物語の始まり~

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後藤静香side~物語の始まり~

最近、学校で"人狼"というゲームが流行ってる。 対話式推理ゲームで、参加者と議論して人狼役を炙り出すゲームだそうだ。 狼が人間を食い殺す前に、見つけ出してやっつける。一対一じゃ敵わなくても、多数決の暴力で狼を一匹残らず処刑に導けば勝ち。 狼と人間が同数になれば、人間が負ける。 肝心なポイントは、これは会話が主体なゲームという事だ。 沢山話して、推理して……の繰り返し。 私もこれを利用すれば……彼と話せるかも。 そう思って、今現在、いつ誘おうかとまごまごしている状況だったりする。 何せクラス中、カード使ったり、アプリ使ったりで頻繁にプレイされているのだ。 ちょっと白熱し過ぎて喧嘩する子も居たけど、ルール上、狼は親友であっても話術で騙さないと始まらないのだ。 だから今では悔しそうにはしているが、ゲーム内の事は引き摺らないのが暗黙の了解だ。 目的の彼、和田玲一郎君は学年で一番の人気者だ。 人当たりも良いから友達も多いし、勉強もスポーツもとても真面目に取り組むので、一番じゃないが端から見たら凄く優秀だ。 今もニコニコと爽やかに笑いながら、友人達と喋っている。 時折聞こえて来る声からして、人狼ゲームをやっているようだ。 「あぁー。また負けた~。玲一郎、強すぎだぜ!!」 「あはは、だって淳大ってば、直ぐに顔に出て挙動不審なんだもん。」 「そうだぜ。尾藤、狼を隠そうって意見がぶれまくりじゃん(笑)」 どうやら玲一郎君の親友の尾藤淳大君が狼を引き当てて負けたらしい。 「ああっ!!もう止め止め!!俺の勝率、玲一郎に読まれまくってどんどん下がってく!!」 自棄気味に机に突っ伏した淳大君は、恨みがましく友人達を見上げた。 「まあまあ、俺達も長くやってるとメタ推理出来るわけよ。癖も覚えるしな。尾藤は特に顔に出るからなー。」 「もういっそ、新しい誰か誘ってメンバー入れ換えてプレイしてみろよ。そうしたら淳大だって最初の数回は勝てるかも知れないぜ?」
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