雨の日の憂鬱

（あ、始まった）

　あたしは、右のこめかみを指で押さえる。

　右のこめかみの奥のほうに、キーンとうなるような痛みの芯が湧き出ていた。

　いつもの、片頭痛だ。

　甘く見るわけにはいかない。このまま放っておくと、痛みの芯がふくらんでいくばかりだ。

　パソコンを見ると、十一時五分の表示が出ていた。

　窓の外では、朝の八時前からふり出した雨が、まだ続いている。となりの屋敷の、大きな庭を埋めつくすように植えられた木々の葉っぱが、細かなシャワーに打たれていた。

（予報は、曇り時々雨だったのになあ）

　などと、今朝ネットで調べた天気予報を、うらめしく思い出す。

　雨がふり続くとわかっていたら、仕事に取りかからなかったのに、とも思う。

　あたしの片頭痛は、雨によって引き起こされるのだ。

　三十分や一時間の雨なら問題ない。三時間から五時間ふり続くと、まず間違いなくこめかみの奥に痛みが生じる。

　この病気が始まったのは、中学のときだった。