雨の日の憂鬱

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 そのころは、雨の日に、ごくたまに頭痛が出るだけだったし、痛みもそんなにひどくなかった。  それが、高校生活を送るうちに、だんだんと症状が重くなり、大学に入ってからは、どうにもならなくなった。  病院で精密検査を受けたけれど、特に異常は見つからなかった。  気圧の変化と、湿度と、雨の音、この三つが引き金になるらしい、ということがわかっただけだった。  あたしはため息をつくと、頭をおさえたまま立ちあがった。部屋の隅に置いてある小型冷蔵庫から、病院で処方された頭痛薬と、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、飲んだ。  リモコンのスイッチを押して、エアコンの冷房を少し強めにする。  ベッドに横たわると、エアコンから涼しい風が顔に当たって、気持ちいい。湿度が下がると、頭痛も和らぐ気がする。両親が、あたしのために、六畳間には不似合いな高出力のエアコンに代えてくれたのだった。  また、雨音ができるだけ聞こえないようにと、二階のあたしの部屋を中心に壁を厚くして、窓を二重サッシにしてくれた。だから、よほどの嵐でもないと雨音は気にならない。これもまた、ストレスを和らげてくれる。  ただ、そこまでしても、雨の日は律義に片頭痛がやってくる。  自分の体がうらめしい。  いっしょに大学に入った同期の子たちは、いまごろ三年次に上がり、ゼミに、サークル活動にと、楽しくすごしているだろう。  あたしのほうは大学を中退し、働くことを考えるしかなかった。  でも、晴れた日にしか働けない女を、どこが雇ってくれるだろう。
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