2 魔術師のレッカと魔道具

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「待って、それ何の話? 『将軍様』って誰のことだ?」 「もちろん(こう)将軍のシェーンハイド様ですよ?」 「いや知らないけど。と言うことは、やっぱり泥棒したんじゃないか。今からでも軍に引き渡そうか?」 「だから自分で買ったんですって。そうしたら盗んだことになってたんです。それよりハルトさん、まさか将軍様だと知らないで堂々と話しかけてたんですか?」  ハルトがレッカに怪訝(けげん)な目を向けると、ローブを直した彼女にも同じような顔をされた。  もしかしなくてもあの長袖軍人のことだ、とハルトは悟った。後将軍と言えば、この国に2人しかいない将軍の内の1人で、軍のナンバー3に当たる偉い人である。沈黙する猛獣のような青い双眸。ハルトの頭に「破滅」の言葉が過ぎった。 「あれ将軍なのか……都合よく忘れててくれないかな」  お気の毒です、と慰められてしまった。まだ指名手配されているという話は聞かないので大丈夫なはずだ。 「全部は聞いてませんでしたが、ハルトさんあの時、制服がおかしいって言ってましたよね。魔術師からしたら衝撃的で。本気でそう思ってるんですか?」 「本気と言うか、単純に納得がいかないんだよ。進化したら露出が増えるなんてシステム、何の必要性もないじゃないか。そんなことのためにダサいって言われなきゃいけないのか? レッカだってローブなしで歩くのは嫌だろ?」 「必要性……なるほど」  レッカはまた焼きナシを一口食べた。無言でモグモグしながら、何かを考えるように視線を横にやった。 「ハルトさん、まだ時間ありますか?」 「一応パトロール中なんだけど、まあ昼の5()までなら。今は正4()くらいか?」 「これも何かの導きでしょう。お役に立てるか分かりませんが、少し制服について考えてみませんか?」 ※昼の5刻=昼の2時~4時頃。この場合2時のこと  正4刻=昼の1時頃  
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