2 魔術師のレッカと魔道具

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「例えば鎧だと考えるのはどうですか? 進化すると鎧がちょっと外れて、魔力が解き放たれるとか」 「鎧ねえ。それなら裸が最強ってことにならないか?」 「ハルトさんって、やっぱり変態……?」 「冷静に考えただけなんですが? ところでレッカ、さっきから食べ過ぎじゃないか?」  確かに、制服や魔力の話をたくさんしたし、魔道具屋も2軒案内してくれた。ついでに町に異常がないかも一緒にチェックした。でもその間に、レッカはあちらこちらで食べ物屋にも立ち寄っていた。今はこねた小麦粉を揚げたお菓子をパクパクつまんでいる。  だから柔らかそうなお腹だったのか、と思ったが、また変態呼ばわりされそうなので黙っておく。 「実はそっちが目的?」 「私は真剣ですよ? ただ、せっかくブローチが教えてくれるので。それにしても、将軍様は何でこれを探してたんでしょう……」 「それも魔道具なんだよな」  ハルトは甘いお菓子を一粒だけもらって食べた。今度妹に買って帰ろう。 「魔道具と言えば、作ってる人もいるのか。その人達も制服のこと何か知らないかな?」   昼の5刻までまだ時間があったので、2人は町の中心から少し外れた魔道具職人が働いている工房を訪ねた。  見学の許しを得て中に入ると、一転、汗が(にじ)むような空気に包まれる。私兵団の集会所よりも2倍ほど広い室内で、十数人の職人達が各々脇目も振らずに作業していた。多くは低いイスに座って素材と向き合っている。高く鳴り響く金属音、炉の中で燃え立つ炎。レッカも初めて来たのか、黄土色の瞳をキラキラさせている。  
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