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ハルトはある1人の職人に目を留めた。彼は小振りのハンマーを理解不能なスピードで連打していた。カカカカカという繊細で細かい音。何がどうなったのか、瞬く間に腕輪が完成する。
神業だ、と呟くと、その中年の職人が振り向いた。
「この国で1番って言われてるよ」
「マジ?」
道理ですごい訳だ。ゾンダークと名乗った魔道具職人は、完成したと思った腕輪を滅茶苦茶な角度からまた叩いた。今度は表面に波模様ができあがった。
感動の溜め息を漏らす一方で、それにしてもとんでもない服だ、とハルトは思った。オーダンの比ではない。茶色の体毛が生えた上半身は、指3本ほどの太さの布で胸と片方の肩が覆われているのみ。下なんて太もも丸出しでまるで下着だ。先ほどの「裸最強説」はそう的外れでもないらしい。
「その服、俺達と同じようなやつですよね? 何回進化したらそうなるんですか?」
「君らは軍人か? 何回かなんて忘れたよ」
暑いからちょうどいい、とゾンダークはどうでもよさそうに言う。ハルトがレッカを見ると、彼女は首をブンブンと横に振った。
「用がないなら放っといてくれないか? 気が散る」
「もう1個質問。こういう制服ってどうやって作ってるのか分かります?」
「専門外」
あまりの素っ気なさに、ハルトは危うく次の言葉を聞き逃すところだった。
「それ専門の職人が縫ってるって話だから、そっちに聞けば?」
「作ってる人がいるんですか!? その方はどこに?」
レッカが前のめりになる。ゾンダークは鬱陶しそうだ。
「俺が知る訳ないだろう。国が隠してることだ。でも、アイツなら知ってるかもな」
「アイツ?」
「シェーンハンドだっけ、いやシューンボンドだったか? 偉い軍人にそんな奴がいるだろ?」
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