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言いつつ金属の板を手に取って、またハンマーで乱れ打ちする。やはり一瞬で腕輪になった。
ここで件の将軍の名前――間違っている気はするが――が出てくるとは思わなかった。当たって砕けるつもりで押しかけてみようか。でも確か、彼はあまり知らないと言っていたはずだ。
「ゾンダークさんは、シェーンハイド様と知り合いなんですか?」
どうかね、という適当な返事に、レッカはあのブローチを取り出した。
職人はそれを引ったくった。ぶっきらぼうだった彼が微かにニヤけながら、「これはいい」とブローチを食い入るように眺め回している。
「アイツがこれを探してたって? クク、なるほどね。魔力の伝導率がなかなかのもんだよ。だからだろうよ」
「特別な魔道具ってこと?」
「いや、面白いけど2級品だ。大体実戦向きじゃないだろう? それでもあのお偉いさんなら、魔力の相性がいいから欲しがるだろうなあ」
たまたま来た工房だったが、思いがけず多くの収穫を得ることができた。やってみるものだ、と明るい感想が浮かぶ。
ブローチが返ってきたところで、ハルトは最後に気になっていたことを聞いてみた。
「そう言えば、この声って何ですか?」
「「声?」」
ゾンダークとレッカの声が重なる。
「何か歌声みたいなものが聞こえるんですけど……魔道具の声ですか?」
「何だって? おい君、どういうことか教えてくれ。俺もコイツらの声が聞きたい!」
「ちょ、痛い……」
突然立ち上がったゾンダークに肩をがっしりつかまれ、ハルトは激しく揺さぶられた。
「聞こえるのはハルトさんだけみたいですね。ちなみに、その声って魔道具屋でも聞こえたんですか?」
「全然」
やっと無骨な手が肩から離れる。ハルト達は3人でポカンと見つめ合った。
自分だけに聞こえる謎の声。どうしてそんな奇妙なことが起こったのか、ハルトには見当もつかなかった。
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