1 コソドロよりも気になること

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1 コソドロよりも気になること

   どうして私兵団の制服はダサいのだろう。より正確に言うと、進化するとなぜユニフォームは布地の面積を失っていくのだろうか。  そんな疑問を口にすると「またそれか」と隊長に呆れ顔をされてしまった。 「このところしつこいぞ、ハルト」  私兵団の最年少、入団してまだ数ヶ月の青年・ハルト。茶色の髪をピョンと1つにまとめた彼は、緑味を帯びた大きな目を持っていて、外見の印象としては好青年に分類される。木とホコリの臭いがする集会所で、他の団員達と共にイスに座っていたハルトは、ムスッと口角を下げた。  しつこいと言われても、制服が変だと気づいてしまったのだから仕方がない。  進化のメカニズムは謎に包まれているが、どうも勝手に布が減るらしい。0回だとハルトのようにグレーに赤い線が入った長袖長ズボン。隊長のオーダンは3回進化した結果、腕や腹筋、膝から下が丸見えの状態になっていた。まるで無理矢理子供の服を着ているみたいで、見ていて複雑な気分だ。  平均的な体格のハルトが進化したら、鍛えた体を持つオーダンよりもっとダサいだろう。筋肉は進化で増えるものではない。  最近のハルトはこんな調子でずっと制服のことを考えていた。 「それより、ここに集まってもらったのは軍から依頼があったからだ。1番隊が既に当たっているコソドロ探しに我々も加わる」  簡単な説明を受けて、ハルト達数名のメンバーは私兵団の集会所を出て町中に散った。  昼の2刻()、太陽はまだ東寄り。この国の夏らしい爽やかで過ごしやすい天気だった。木と白い壁土で作られた建物が立ち並んでいて、それが少し眩しかった。石畳の道を今日も多くの人が行き交っている。  この町は国の中心地だが、余所の国にはもっと栄えた大都市がゴロゴロあると聞く。人捜しがしやすい規模でよかったと今は感謝したい。  そのコソドロが現れたのは数日前のようだし、焦ったところで意味がない。ハルトは2階建てが並ぶ通りを散歩するように歩いた。団員の中には露店で堂々と買い物をしている人もいたが、ハルトは「節約節約」と誘惑を断ち切った。 ※昼の2刻=朝8時~10時頃  
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