1 コソドロよりも気になること

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 町の人に話を聞いたり、その流れで全く関係ない愚痴を聞かされたりして過ごし、太陽が大分昇ってきた頃だった。  荷車3台が横並びになれる幅の通りで、反対方向から誰かが走ってくる。しばらくそうしているのか、息を弾ませながらの小走りだった。  薄茶色のローブを着た、長い金髪の少女――。 「おいあんた」  容疑者の特徴と同じだと気づいたハルトは、少女とすれ違うタイミングで彼女の袖を引いた。が、それがまずかった。相手が走っていた勢いでローブのボタンがつるっと外れる。  首周りとおへそ周りが大きく露出した服が日光にさらされた。 「な、何するんですかー!」  ぷにっとした色白のお腹から慌てて目を逸らす。少女は丸い滑りやすそうなボタンを留め直し、胸の辺りをかき抱くようにした。 「いきなり何なんですか? 変態なんですか?」 「悪かったけど、わざとじゃないの分かるだろ?」  オーバーだな、と眉根を寄せつつ、ハルトは真っ赤になった少女を観察した。顔の両サイドに三つ編みを垂らしているのも容疑者と一致する。人がよさそうな顔ではあるが。あと眉毛がやや太め。  立ち去る素振りを見せた彼女を、ハルトは再度手首をつかんで引き止めた。 「話がまだ終わってない。あんた――」 「私は泥棒じゃないですよ。先ほども聞かれました」  先回りして言われる。ローブの少女は不服そうだった。 「何なんですか一体? 皆さんは私が何を盗んだって言うんですか?」  あれ、と思った。言われてみれば、コソドロが何を盗んだのかは聞かされていない。私兵団はつべこべ言わずに捕まえろということなのか。迷ったハルトは、一端この少女を本部に連れて行こうと決めた。  その時だった。  
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