2 魔術師のレッカと魔道具

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2 魔術師のレッカと魔道具

 私兵団の第一の使命は、有事の際に正規軍と共に戦い、小国であるクラインガルトを守ることだ。そういう組織だからこそ、団員は魔力が使えるようになるユニフォームを支給されるし、戦時でなくても鍛錬に励んでいる。  しかし実際には、軍に代わって町を巡回したり軍の命令で道路工事に駆り出されたりと、仕事内容は幅広い。町の人の雑用まで手伝うから、もはや便利屋かも知れない。  この日、見回り当番が回ってきたハルトは、同じ隊の先輩2人と真昼の通りをブラブラしていた。彼女達、クラッテとリリーベルは、私兵団にとって貴重な女性団員だ。物好きとも言う。  白い壁の町並みが今日も日に映えている。かごを売る商人や軽食屋の主人が、通行人に元気よく声をかけていた。 「2人は私兵団のユニフォーム好きか?」  ハルトの唐突な質問に2人が顔を見合わせる。 「私は誇りに思っている」 「クラッテ。ハルトはきっと進化の話がしたいのよ。男を誘う口実になるし、あたしは気に入ってるけど?」 「君という人は。私は鍛錬に支障がなければそれでいい」  片や細マッチョな――進化で強くなるのは魔力のはずだが――腕とふくらはぎが()き出しで、片やスリムな腰と片方の太ももを見せつけている。そんな制服の個人差はあったが、2人とも実に堂々としていた。周囲から向けられる好奇の目も完全スルー。質問する相手を間違えたかも知れない。  チラッと、ついリリーベルの太ももを盗み見しつつハルトは思う。一緒にいるとこの服に少し慣れてしまうが、自分の妹に置き換えてみるとやっぱり異様だった。兄としては絶対着てほしくない。  そんなこんなで、ハルトは今日も制服のことを考えてしまっている。以前は何とも思わなかった制服のことを。  
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