2 魔術師のレッカと魔道具

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 3人はやがて城壁にほど近い場所に出た。城の空堀に沿ったこの通りは石畳ではなくレンガ敷きで、大地が夕日を吸い込んだかのような色が遠くまで伸びている。  城壁を横目に小洒落(こじゃれ)た色の通りを歩いていると、空堀のすぐ側に黒いローブ姿の人がいた。ひっくり返した木箱を前に置き、自分はイスに座って暇そうにしている。最近見かけるようになった占い師だった。  ハルトが「占ってくる」と言うと、クラッテは長い眉をピクッと跳ねさせた。 「一応仕事中なんだが?」 「分かってる。でも、町の人に話を聞くのは悪いことじゃないよな? 中時(ちゅうじ※)、いや小時(しょうじ※)で終わるから」    小さなイスに腰かけ、ハルトは木箱を挟んで占い師と向かい合った。フードを目深に被った顔には僅かに幼さが残っている。占い師は大きな目でギロリとハルトを睨んだが、「何を占いますか?」とプロらしく淡々と尋ねた。 「占い師さん。俺は妹と仲良くやっていけますか?」 「妹さんとは難しいでしょう」  カードも使わずに断言された。ハルトは渋い顔で続ける。 「じゃあもう1つ。制服問題がどうにかなるかって占えますか?」  占い師は今度はカードデッキを手に取り、気怠(けだる)そうにシャッフルした。 「『死』のカードが出ました。破滅ですね」 「何て?」 「言い方を変えれば日常が終わる暗示です。つまり破滅でしょう」 「……」  素晴らしい結果に涙が出そうだ。無愛想な占い師に何か言ってやろうかと思ったが、踏み止まったハルトは黙って木箱に銅貨を置いた。 ※中時=約5分  小時=約2.5分  
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