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占いを終えて戻ると、そこには意外な顔があった。サラサラとした金髪、いい人そうな茶系の瞳と太めの眉。背はハルトよりも頭半分以上小さい。
「さっきからこの娘が我々を尾行していた」
「尾行というか、なかなか話しかけるタイミングが……あの時はありがとうございました」
そう言ってその人物、5日ほど前に会ったローブの少女がハルトに頭を下げた。顔の左右に垂れた三つ編みがその勢いで揺れ動く。全く身に覚えがない。
薄茶のローブについたボタンが2つから3つに増えていて、むしろ申し訳ない気持ちになるのだが。
「……さあてクラッテ、あたし達は退散しよっか?」
リリーベルに唐突に腕をつかまれたクラッテが、グイグイと引っ張られていく。魔力も使っているのかすごいパワーだ。「仕事中だぞ」とクラッテは正論を言ったが、それも空しく、2人はハルトの視界の外へと姿を消してしまった。
こっちも仕事中なんだけど、という真っ当な主張は、胸の中にしまっておくべきだろうか。
ハルトが改めて少女を見ると、彼女は目をパチパチさせて微笑んだ。
***
コソドロの件が結局どうなったのかハルトは知らない。あれから割とすぐに、軍の指示で私兵団は手を引くことになったからだ。解決したとのことだが、いかにも疑わしいこの少女が平然と町にいるのはどういうことだろうか。
「私はレッカと言います。魔術師の端くれです」
穏やかに、少女はそう自己紹介した。前回とはまるで別人だ。
「俺はハルト。それで、俺何かしたっけ?」
「ご謙遜を。軍を足留めして私を逃がしてくれたじゃないですか」
「あれは聞きたかったから聞いただけなんだけど」
「ええー?」
レッカは拍子抜けしたようだったが、それでもお礼をさせてほしいと、ハルトを賑やかな通りへと連れ出した。
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