2 魔術師のレッカと魔道具

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 石畳のでこぼこした感触が時折足の裏に伝わってくる。道行く人、談笑している人、棒を操る大道芸人を見守る人々と、様々な人の横を通り過ぎる。  歩きながら、ハルトはレッカが3歳ほど年下で――もっと下だと思っていた――10代半ばなのに既に進化していることを知った。魔術師とは関わりがなく今まで謎の存在だったのだが、こちらも進化で布が減るらしい。つまり、制服の上にローブを着ている状態。魔力が弱まってしまいそうな気がしたが、何も言わないでおいた。  レッカは1本の脇道にある屋台に到着すると、ナシの串焼きを奢ってくれた。フルーツを焼くのはハルトにとっては斬新で、甘味と香ばしさ、それと香辛料がちょうどよく合わさって意外と美味しかった。 「んー、これ初めて食べましたけど、イケますねえ!」  自分用の串焼きを頬張り、レッカはフニャッとした笑顔だ。 「食べたことあったんじゃないのか」 「えへへ。実はですね……」  なぜかレッカに手招きされたのでついていくと、近くに人気がなくなったところで、彼女は不意にローブの丸いボタンを1つ外した。ギクッとしたハルトの前でそのままローブをチラリとめくる。鎖骨周りの白い肌と見えそうで見えない谷間が、ハルトの目に飛び込んできた。 「このブローチが美味しいものを教えてくれるんです」  言われてみると、肩の下で硬貨よりも2回りほど大きな金色のブローチが光っていた。 「ああそれか。びっくりした」 「そうなんです。将軍様はきっとこれを探してたんですよ。もう諦めたみたいですが」  全然嚙み合わない言葉が返ってくる。  
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