ある雨の日と少女

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 少女と教師の間には、20才以上の差があった。また、彼には妻子がいる。それに第一、教師と生徒の恋愛など許されるはずもない。  だから仮に彼女のそれが恋だったとしても、叶うことはないだろう。しかしそれが届かぬ想いだとしても、少女はそれでよかった。  今まで授業中指名される以外でまともに話したことは一度もなかった。だが話せたからと言って何かできるというわけでもない。彼女にできることといえば、授業を誰よりも真面目に聞いてテストで良い点をとることくらいだった。  それでも少女はただ、彼の声が聞けるだけで幸せだった。
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