447人が本棚に入れています
本棚に追加
私が所属しているのは、図書委員会。その名のとおり、図書関係全般の仕事を担当する委員だ。
いろんな仕事があるけれど、やはりメインは、図書の貸出や書架の整頓だ。二人一組で、毎日当番制でその任にあたることになっている。
私たち一年生は、最初、三年生と組むことになっている。基本的な仕事の流れを教え、スムーズにこなせるまでフォローするのは、三年生の仕事らしい。
でも、そんな三年生もそろそろ受験で忙しくなる。ということで、メイン業務は一、二年に引き継がれる。
今日の委員会は、新しい組み合わせを決めるというのが目的で開催されるのだった。
「こっちで決めてもよかったけど、やっぱり組みたい人と組んだ方が仕事もスムーズだと思うので、希望がある人は言ってください」
図書委員長の伊勢先輩が、柔らかな口調で言う。伊勢先輩はふんわりとした優しい雰囲気の先輩で、何かを決める時もこうやって皆の意見を尊重することが多い。だから、ものによってはなかなか決まらないこともあったりする。でも、仕事を一緒にする相手決めに関しては、この方がいいんだろうなと思った。
「はい、私たち組みます」
「こっちも」
「俺も」
「私も」
次々と委員長へ申告に行く皆。
えええええっ!?
誰と組もうか、そんなことは全く気にしていなかった私は呆然とする。
そして、あれよあれよという間に組み合わせが出来上がってしまい、残るは私と二年の藤沢先輩だけになった。
「あ~……残り二人ってことで、いい?」
委員長が私に聞く。
そんなこと、私に聞かないでほしい。ここで私が嫌だと言えるわけがない。
そう目で訴えると、委員長は困った顔をしながら藤沢先輩に尋ねた。
「え……えっと、藤沢君……い、いいかな?」
委員長が恐る恐るそう尋ねると、藤沢先輩はボソッと「いいですよ」と言った。
藤沢先輩、今日も安定の機嫌の悪さだ。私は先輩を横目で見て、そう思った。
藤沢先輩はいつも不機嫌だ。いや、本当に不機嫌なのかどうかはわからない。
ただ、極端に言葉が少なくて、おまけにボソッとしゃべるものだから、どうしてもそう思ってしまう。
そして、皆が藤沢先輩を恐れる最大の要因は、その目つきの悪さだった。ぎゅっと眉間に皺を寄せて目を細めていることが多く、正直怖い。
そんな藤沢先輩だから、皆彼と組みたいとは思わない。放課後の数時間、ビクビクして過ごすなど、軽い拷問だ。
「あの……藤沢先輩、よろしくお願いします」
おずおずと挨拶すると、藤沢先輩はやっぱりボソッとした声で、「よろしく」と返事した。
とりあえず、嫌がられてはいないみたい。まぁ、嫌だと言ったところでもう私しか残っていないんだけど。
これからの図書当番、いったいどうなるやら。
ちょっと不安はあったけれど、私は気持ちを切り替え、頑張るぞと密かに気合を入れ直したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!