不機嫌のワケ

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 私が所属しているのは、図書委員会。その名のとおり、図書関係全般の仕事を担当する委員だ。  いろんな仕事があるけれど、やはりメインは、図書の貸出や書架の整頓だ。二人一組で、毎日当番制でその任にあたることになっている。  私たち一年生は、最初、三年生と組むことになっている。基本的な仕事の流れを教え、スムーズにこなせるまでフォローするのは、三年生の仕事らしい。  でも、そんな三年生もそろそろ受験で忙しくなる。ということで、メイン業務は一、二年に引き継がれる。  今日の委員会は、新しい組み合わせを決めるというのが目的で開催されるのだった。 「こっちで決めてもよかったけど、やっぱり組みたい人と組んだ方が仕事もスムーズだと思うので、希望がある人は言ってください」  図書委員長の伊勢先輩が、柔らかな口調で言う。伊勢先輩はふんわりとした優しい雰囲気の先輩で、何かを決める時もこうやって皆の意見を尊重することが多い。だから、ものによってはなかなか決まらないこともあったりする。でも、仕事を一緒にする相手決めに関しては、この方がいいんだろうなと思った。 「はい、私たち組みます」 「こっちも」 「俺も」 「私も」  次々と委員長へ申告に行く皆。  えええええっ!?  誰と組もうか、そんなことは全く気にしていなかった私は呆然とする。  そして、あれよあれよという間に組み合わせが出来上がってしまい、残るは私と二年の藤沢先輩だけになった。 「あ~……残り二人ってことで、いい?」  委員長が私に聞く。  そんなこと、私に聞かないでほしい。ここで私が嫌だと言えるわけがない。  そう目で訴えると、委員長は困った顔をしながら藤沢先輩に尋ねた。 「え……えっと、藤沢君……い、いいかな?」  委員長が恐る恐るそう尋ねると、藤沢先輩はボソッと「いいですよ」と言った。  藤沢先輩、今日も安定の機嫌の悪さだ。私は先輩を横目で見て、そう思った。  藤沢先輩はいつも不機嫌だ。いや、本当に不機嫌なのかどうかはわからない。  ただ、極端に言葉が少なくて、おまけにボソッとしゃべるものだから、どうしてもそう思ってしまう。  そして、皆が藤沢先輩を恐れる最大の要因は、その目つきの悪さだった。ぎゅっと眉間に皺を寄せて目を細めていることが多く、正直怖い。  そんな藤沢先輩だから、皆彼と組みたいとは思わない。放課後の数時間、ビクビクして過ごすなど、軽い拷問だ。 「あの……藤沢先輩、よろしくお願いします」  おずおずと挨拶すると、藤沢先輩はやっぱりボソッとした声で、「よろしく」と返事した。  とりあえず、嫌がられてはいないみたい。まぁ、嫌だと言ったところでもう私しか残っていないんだけど。  これからの図書当番、いったいどうなるやら。  ちょっと不安はあったけれど、私は気持ちを切り替え、頑張るぞと密かに気合を入れ直したのだった。
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