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「すまんな、まどかさん。まだまだあいつも子どもでなぁ」
「いっ、いえいえ!」
いきなりこちらに振られ、私はビクッとなりながらも返事をする。
あいつも子どもで、なんて言われても、私なんて更に一年子どもなんですが。
「あ、先輩さっきエプロンしてましたよね……?」
私が思いついたように言うと、リビングに残っているおじいさん、お父さんともに、きょとんとした顔をした。
先ほどすごい勢いで入ってきた先輩はエプロン姿だった。またそれが妙に似合っていて、私は一瞬悶えて奇声を発しそうになったのだ。もしかして、藤沢家では男も料理をするのだろうか。
「あぁ、今家内を手伝っていてね」
お父さんが代わりに答えてくれる。私は驚いて、お父さんに更に質問した。
「先輩、お料理できるんですか?」
「家内の方針っていうのかなぁ……。今時の男は、料理もできなきゃ話にならない、とか言って、よく手伝わせてるよ」
「そうなんですか……」
うわー、ヤバイ。私なんてほんっとたまにしか手伝わないし、料理ができるなんてとても言えない。これって絶対負けてるよね……?
インテリイケメンで、優しくて、可愛くて、その上料理もできるとか、どんだけスペック高いんですか! 藤沢先輩っ!!
私の心にほんの僅か、ブルーな気持ちが入り込む。私、女としてもうちょっと頑張んなきゃいけないんじゃないだろうか。
そんな風に思っていると、先輩がリビングに再びやって来た。今度はエプロンを外している。
「用意できたから」
「ご苦労さん! さ、まどかさん、今からパーティーだぞ!」
おじいさんがスキップしそうな勢いでリビングを出て行き、「ごめんね、うるさくて」と困ったような顔で笑いながら、お父さんが私を案内してくれる。
藤沢家の人たちはやっぱり楽しい。私はクスクスと笑って、お父さんと一緒におじいさんの後を追いかけていった。
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