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「どうしたの?」
いきなり真由ちゃんの顔がにょきっと現れ、私はあまりの驚きで椅子から落ちそうになる。
「びびび、ビックリしたっ!!」
「失礼ね」
「だって、急に真由ちゃんの顔が!」
「よけい失礼でしょうがっ!」
ムッとした真由ちゃんだけれど、すぐに真顔になって、もう一度「どうしたの?」と聞いてきた。
真由ちゃんは鋭い。いくら隠そうとしても、最後には白状させられてしまう。これまでの経験で、私はそのことをしみじみと実感していた。だから、藤沢先輩目当てに来ている彼女たちのことを、真由ちゃんに話してみた。
すると開口一番、真由ちゃんはこう言った。
「恋、だね」
「だよね。あの人たち、藤沢先輩のことが好きなんだよね……」
「違うわよ」
「へ?」
真由ちゃんは呆れたように、私を指差す。
「あんたよ。まどかのこと」
「えぇっ!? いやいやいや、違うでしょ」
「だって、藤沢先輩のファンの子たちが気になるんでしょ?」
ファンって。アイドルじゃあるまいし。
「き、気になるって言っても……そういうんじゃないよ」
「じゃ何よ?」
「んーと……先輩の良さを知ってるのが、私だけじゃなくて寂しいなー……とか」
真由ちゃんの目が点になった。そしてなんか、真由ちゃんの視線から憐れみのようなものを感じる……。
そんな私をよそに、真由ちゃんは断言するように言った。
「それ、嫉妬だよね」
「!」
私の目が大きく見開く。
え、ちょっと待って? 嫉妬!?
私は慌ててこれまでのことを思い返してみる。
藤沢先輩が見た目によらず優しいこと。すごく気遣いをする人ってこと。努力家ってこと。歴史ものが大好きだってこと。本を読んでいる藤沢先輩の穏やかな表情。
そして……そんな藤沢先輩目当てに図書室へ来る女の子たち。それに、もやもやする私。
真由ちゃんを見る。真由ちゃんは「やっとわかった?」とでも言いそうな顔だった。
──語るに落ちた。
私は真由ちゃんとの会話で、自分の恋心を自覚してしまった。
「……そうみたい」
「まどかのいいところって、バカみたいに素直なところよね」
真由ちゃん、一言よけいなんだけど。
横目でジロリと睨むと、真由ちゃんは笑いながら、私の背中をポンポンと軽く叩いた。
「素直で可愛いって言ってんの! それより」
真由ちゃんが楽しそうにクイと口角を上げる。美人に拍車がかかる。
「ガンバレ、まどか!」
何をどう頑張ればいいのかいまいちわからないけれど、とりあえず私はコクンと頷き、にへらっと笑ったのだった。
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