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「見づらいのに無理してると、どんどん視力が落ちていきますよ?」
「……」
「そんで、もっと眉間に皺が寄って、しまいにはその皺が取れなくなっちゃいますよ?」
言われて初めて気付いたらしい。藤沢先輩は手で眉間の辺りを押さえる。でも、すぐに興味がなさそうに言った。
「別にいい」
「えー、勿体ない!」
思わずそう言ってしまうと、先輩が私の方をじっと見た。
「なんで?」
「えっと……」
ここは本音を言うべきか、言わざるべきか。
藤沢先輩の眉間に皺がなくなれば。そして、眉間に皺を寄せながら目を細めたりしなければ。先輩がイケメンであると、多くの人が知ることになる!
とっつきは悪いけれど、先輩は元々親切でいい人だ。今よりずっと先輩を狙う女子は増えてしまう。──それは面白くない。
でも、そんな私一個人の思惑だけで、先輩の顔に皺を作ってもいいのか? いや、よくない!
ここは涙を呑んで、本音をぶつけることにした。
「眉間に皺を寄せてない先輩は、普段皆から怖がられている先輩とは別人です。はっきり言えばイケメンです。だから勿体ないです」
……言った! 我ながら、これ以上ないほど簡潔でわかりやすい説明だ! 自画自賛!!
私は藤沢先輩の様子をそっと窺う。
「……」
藤沢先輩の顔が赤くなっていた。耳まで真っ赤だ。
先輩のこんな姿を見るのは、もしかしてかなりレアなんじゃ? どうしよう、先輩なのに、可愛いと思ってしまう。
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