不機嫌のワケ

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「イ……イケメンとか……興味ない」 「……そっ、そうですよね! えっと……ごめんなさい」  先輩の照れっぷりに、こっちまで照れてきた。でも、先輩は私が謝ったことに気を遣ったのか、 「ひ……平井は褒めてくれたんだから、別に謝らなくていい……」  などと言ってくれるものだから、私もたまらなくなって、頬がどんどん熱くなっていく。  今、受付の列に誰もいないからいいようなものの、二人揃って真っ赤になっているこの状況は、どう見ても恥ずかしすぎる。  私は気を落ち着かせようと、以前、藤沢先輩から勧めてもらった密室シリーズの続きを読み始めることにした。すると、先輩はそれを見て私に尋ねてくる。 「犯人、わかったか?」 「わかるわけないじゃないですか! まだ半分くらいしか読んでないのに」 「半分まできてれば、かなり伏線も張られてるし、大体予想できる」 「……先輩のその予想、当たったんですか?」 「当然」  私は推理ものは好きだが、犯人当てはできないのだ。 「……絶対言わないでくださいね」 「そう言われると言いたくなる」 「先輩、いじめっ子ですか?」  途端に、先輩が破顔する。こんなにはっきりと笑った顔を見たのは初めてなので、めちゃくちゃビックリした。 「平井って変なヤツ」 「なんでですか!」 「誰も組みたがらないオレと組んだり」  それは、私たちが二人残ってしまったからで。 「なんか、こっちじっと見てたり」 「……バレてましたか。不快だったらすみません」 「不快……とかはないけど。平井はそういうんじゃなくて……」  藤沢先輩は少し考え込むように上を見上げる。そして、ボソッと呟くように言った。
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