木曜日の図書室に異変あり

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 私はとことん甘かった。  藤沢先輩の顔立ちがとんでもなく整っていること、不愛想な見た目にそぐわず、優しいこと。そんな藤沢先輩の不機嫌顔が解消された時、一体何が起こるのか。  実際にそうなった時、私は嫌というほどそれを思い知ることになったのだ。  事の始まりは、私の一言だ。  目が悪いせいで、いつも眉間に皺を寄せている藤沢先輩。でも先輩は病院が苦手らしく、まだ見えると言っては眼科へ行こうとしなかった。しかしこのままでは先輩の眉間に消えない皺が残る! と危機感に迫られた私は、少しずつ縮まった距離を武器に、つい先日やっと言いたかった言葉が言えたのだった。 「藤沢先輩、眼科へ行きましょう!」 「え?」  図書委員の当番が終わり、さぁ今から帰ろうかというタイミングだったので、先輩は目をぱちくりさせて驚いていた。 「まだ見えるからいい」  うん、それは前も聞いた。でも、このままだと益々視力は落ちてしまう。 「これ以上視力を下げないために眼科へ行くんです。眼鏡なりコンタクトにすれば、もっと本が読みやすくなるし、楽しめますよ!」 『本が楽しめる』  一番の売り文句はこれだと思った。他のどんな言葉より、藤沢先輩にはこれが響くはず。  そう思った私の考えはまさにドンピシャで、先輩はしばらくうーんと唸って考え込んだ。もう一押し何かないかと私が必死で考えていると、先輩が私を呼ぶ。 「平井」 「……」 「平井!」 「えっ!? あ、何ですか?」  考えるのに夢中になっていたので反応が遅れ、慌てて藤沢先輩の方を見ると、先輩は私をじっと見つめたままボソッと言った。
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