不機嫌のワケ

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「まどかが本を読むって意外よね」  クラスで一番仲良しの高野(たかの)真由(まゆ)ちゃんがそう言って、本を読んでいる私の顔を覗き込む。 「意外ってどういう意味?」 「そのまんま。とても本なんて読みそうにない顔」 「顔は関係ないでしょっ!」 「じゃあ、性格」 「本を読まない性格ってあるの!?」  失礼な話だ。 「だって、まどかって落ち着きがないし、どんくさいし」 「あの……真由ちゃん、どうして私、ディスられてるのかな?」 「あぁ、ごめんごめん! まどかにもいい所はいっぱいあるよ。明るくて、人懐っこくて、好奇心旺盛で、騒がしくて!」 「最後、おかしいよ!」  あはははと笑いながら真由ちゃんが席を立つ。  そろそろ時間か、と私もスマホの時計をチラッと確認した。 「じゃ、そろそろ瑛士(えいじ)君が来るから帰るね~」  瑛士君とは、真由ちゃんの彼氏さんだ。  彼氏さんは三年生で、あまり遊んだりできない分、登下校は一緒にしているらしい。彼氏さんのクラスは終わるのが遅いらしく、真由ちゃんはいつも教室で待っていた。  私は委員会までの時間を教室で過ごしていたこともあり、私たちは少しずつ話をするようになった。  真由ちゃんは私とは正反対で、落ち着いたクールなイメージがある。頭もいいし、何となく近寄りがたい雰囲気があったけれど、いつの間にか仲良くなっていた。会話してみないとわからないことってたくさんある。 「まどかは委員会あるんでしょ?」 「うん、そろそろ行く」 「頑張ってね~」 「そっちもね」  私たちは笑って手を振り、教室を出たところで別れた。
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