不機嫌のワケ

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 私と藤沢先輩の担当曜日は、木曜日になった。  初めて藤沢先輩とコンビを組む最初の木曜日、私は少し緊張して図書室に入る。すると、すでに藤沢先輩は受付に座っていた。 「すみません! 遅くなりました」  慌てて私も受付に入ると、藤沢先輩はチラッと私を見て、小さく首を横に振る。 「オレのクラス、終わるのが早いだけだから」 「そう……なんですね」 「……」  これは、気にするなってことだろうか。  よくわからないけれど、たぶんそうなんだろう。うん、そういうことにしておこう。  私は荷物を足元に置いて、受付業務の仕事に取り掛かる。  図書室での仕事は、何気に細かいものが多い。貸出返却処理もそうだし、返却された本に傷や破れ、落書きなんかがないかをチェックしたり、書架を軽く掃除したりもする。うるさくしている生徒に注意して、静かな環境を保つのも私たちの仕事だ。  でも、それほど忙しくない時間もあって、そんな時は、受付にいながら本を読んだり、宿題をやったりなんかもできる。 「あの、すみません」 「あ、はい」  一人の男子生徒が私に話しかけてきた。貸出かな? 返却かな? でも、彼の手元には本がない。 「ポラリスの誓いって本を探してるんですけど、どこにあるかわからなくて」 「はい、ちょっとお待ちくださいね」  私は端末で検索をかける。すると、ヒットした。ということは、ここにあるということだ。  大きな書店に置いてあるような、書籍検索ができる端末が受付にはある。ただ、書店に置いてあるものは書架の場所も表示されて便利なのだけど、学校のものには残念ながらない。  どうせなら、そういうシステムもつければいいのに。でも、検索システムがあるだけでもありがたいのかもしれない。うちの高校の蔵書量は、この辺りの学校の中では一番というくらい多いから。  探している本はここにある。なら、書架を管理している私たちがそれがある場所を探し出し、利用者に案内するのも仕事のうちだ。
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