426人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
「ダメだダメだっ!! まどか、クリスマスはお父さんたちと一緒に食事だっ!!」
「ええええーーーーっ!!」
私の顔からサーッと血の気が引いていく。ど、どうしよう……。もう行くって返事してるのに!
「あなた」
その時、お母さんが静かに言葉を発した。今までとは全く違うテンションに、私たちの身体は瞬時に緊張で固くなる。お母さんが静かに話し出す時は、大抵この後の展開は決まっている。
「娘の恋も応援できないなんて……なんて器が小さいのっ!! 情けないっ!!」
「いや、だって……」
「だって? だって、何?? 自分の高校時代を思い出してみなさいな! 恋の一つや二つしてたでしょ? したことないなんて言わせないわよ!」
実はうちの両親は同じ高校出身で、お互い昔の恋愛遍歴は知り尽くしている……らしい。なので、お父さんも下手なことは言えない。
「そんなこと言ったって! 俺たちの頃と比べると今の子は……」
「はぁ!? あなたは自分の娘を信用できないの?」
「そうよー、もっと娘を信用してよー」
お姉ちゃんがすかさず便乗する。ちゃっかりしてるけど、お父さんかわいそうだよ、涙目になってるよ。
私は溜息をつきながら、お父さんに向かって言った。
「お父さんが心配するのはわかるよ。でももう先輩と約束したし、私も行きたいと思ってるの。先輩のお母さんとおじいさん、すっごく面白くていい人たちだし」
お父さんは涙目のまま私を見ていたけれど、あれ? といったように首を傾げた。
「お母さんとおじいさん? え? 先輩と二人きりじゃないのか?」
はあっ!? そんなことを想像してたのか、この人はっ!!
「違うよ! そんなわけないでしょ!?」
「いや、てっきり二人きりだとばかり……」
「付き合ってもないのに二人きりなわけない……いや、例え付き合ってたとしても、家の中で二人きりになるようなこと、先輩はしないよっ!」
うん、藤沢先輩ならそんなことはしない。二人だったら、たぶん外で……いやいや、私も何を想像膨らませてるんだ!?
私はコホンと咳払いをし、三人に向かって宣言した。
「とにかく! 私と藤沢先輩は付き合ってないけど、二人でお祭りに行くし、クリスマスもお呼ばれするの! 何か文句あるっ!?」
私の迫力に気圧されたように、三人はブンブンブンと勢いよく首を横に振った。
最初のコメントを投稿しよう!