藤沢先輩はいつも不機嫌

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 私、平井まどかは昔から本が好きだった。  家族全員がそうだから、家には背の高い本棚が三つほどあって、狭い家を益々狭くしていた。  ジャンルごとに区分けをし、綺麗に整頓された本棚を見ていると、ワクワクしてしまう。なので、昔から図書室や図書館といった場所が、私の心躍る場所になっている。  私が小学校の頃からずっと図書委員をやっているのは、いわば当然、当たり前のこと。だから、高校に入学した今も、もちろん図書委員の座に居座っている。  図書委員といえど、全員本が好きというわけじゃない。なんとなくでいる人もいるし、楽ができそうだから、という理由で入った人もいる。  まぁ、そういう人はすぐに現実を思い知らされる羽目になるけれど。  そんな中、ダントツで気になる人がいる。  ──藤沢先輩。  目つきが鋭く、眉間にぎゅっと皺を寄せ、これでもかというほどに不機嫌そうな表情。そのせいで、藤沢先輩は皆から恐れられているのだ。
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