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翌日、三井に呼び出されたのは駅前の公園だった。時刻は昼の一時頃、三井はベンチに座って鳩に餌をやっていた。
三井は顔を上げ、「来たか。ちょっと付き合えよ」
「何だ?これからデートでもするのか?」
外には高級外車が停まっていた。二人は車に乗り込み、都道を北に走らせた。遠野は助手席からミラーを覗いた。案の定、黒塗りの車が後をつけてきていた。
道中、三井はコンビニに車を停めた。
遠野は財布を取り出し、「ついでに水と煙草を買ってきてよ」
「俺はお前の舎弟じゃねえよ。自分で買ってこい」
「免許証忘れたんだよ」遠野はそう言って、両手を合わせた。「頼むよ、三井さん」
再び車に乗り、辿り着いたのは郊外のボウリング場だった。三井は受付を済ますと靴を履き替え、レーンにさっさと向かった。
「なあ、何でボウリングなんだ?話をするんだろ?」
「するさ。投げながらな」三井はそう言って、教科書のような美しいフォームで球を投げた。球は緩く右にカーブすると、十本のピンを全て倒した。見事なストライクだった。
「お前もやれよ、見てるばっかじゃつまらねえだろ?」
「俺、ボウリングなんてやった事ねえよ」
「そんなに難しくねえだろ」
三井に言われ、遠野は見よう見まねで球を投げた。ボールはサイドに当たってガターになった。液晶画面にGの文字が映し出される。
「つまんねえ」と、遠野は悪態をついた。
三井は二投目に入っていた。「それで、薬は手に入ったのか?」
「ああ、即効性のやつな。飲み物に溶かして飲めばイチコロよ」
三井はまたストライクを取った。遠野も続くが、またもやガターになってしまった。
「お前、運動音痴だな」と、三井は言った。「小学校の時も悲惨だったろ?運動会でコケるようなタイプだ」
「生憎、ガキに交じって駆けっこなんてした覚えはないんでね」
三井は鼻で笑う。「お前もガキだったろ」
「うるせえ」
三井は言いながらレーンに立ち、またもや奇麗なフォームで球を投げた。またもや見事なストライク。
「負けた奴が奢りな」と、振り返って三井は言った。
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