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ぶっちゃけ睡眠時間は減るし、食事は不規則、思い通りに動いてはくれない後輩、四方八方から飛び込んでくる別件に追われ、お肌の曲がり角を曲がり切って突き当たった先にあったのは、もうニキビとは呼ばない吹き出物の温床だった。
頑張っているのに、どんどん醜くなっていく。
昔からそうだ。頑張ろうと思った時には、肌が荒れる。
学生時代にテニス部に入って、頑張っていたら日焼けし過ぎた肌が、腫れあがった。
大学に入って、大人の階段を上る女友達に便乗し、化粧を覚え始めたら肌が爛れて、見るも無残な顔になった。
社会人になって、気難しい上司、手厳しい先輩、分かり合えない恋人、私の肌は素直に白旗を上げ、ストレス社会の奴隷と化した。
今やもう、健やかな肌でいられた時間の方が少ないかもしれない。
美肌至上主義の現代において、負けっぱなしの人生だ。
元々、肌が荒れやすい自覚はあるけど、自分に構っている時間なんてない、仕事に生きると決めた、なんて自分に都合のいい言い訳を並べる事ばかり上手くなる。
そして鏡を見て、自分にがっかりするのだ。
「これじゃ、振られても仕方ない……」
女子トイレの鏡に映った自分に、そう呟いた。
若い彼女を連れて歩いていた元カレの姿が、いつまでも瞼の裏から消えてはくれない。
いつまでも枯れてくれないジュクジュクしたニキビの様に、触れればいつだってチクチク痛み、強く払拭しようとすると血が出て大惨事になる。
だから触らない。消えてくれないなら、放置するしかない。
肌が綺麗な若い子を見ると、羨む自分を見つけて、落胆する。
心美と言う自分の名前が、心くらいは綺麗であってよ、顔は大したことないんだから。
親はそう望んでいたのかもしれないなんて、とってつけたようなネガな考えまで浮かんでしまう。
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