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「ようやくの事で異常気象を止められましたね」
「それもこれも、世界中の人達が、地球規模で環境に対して気を遣い、少しずつでも自然を育みだした結果です」
よく晴れたある日、無機質なコンクリートの壁と床に囲まれた、白衣を着た青年と、初老の男性が、目の前に広がる大草原を見詰めながら会話を始めた。
「それにしても、よく気付きましたね」
「えぇ。……ずっと、調べていたのですよ。雨がやまなくなった原因を」
「そうなんですか。……それで、原因は?」
青年が固唾を呑みながら、一息吐いた初老の男性に先を促す。
「地球から自然が完全になくなった日に、やまない雨が降り始めた」
「……まさか。いや。でも、そう、言われてみれば」
「言わば雨は、地球の涙だったのだよ」
言われて青年も、内心で納得する。
最初、初老の男性からそう言われ、自然を、全ての環境を取り戻そうとされた時、世界中が彼を笑い者にしたのだ。
だが、初老の男性は諦めず、例えたった一人でも活動に取り組み始めた事で、周囲の環境が一気に変わった。
あんなに、何をしても頑なにやまなかった雨は、少しずつやむようになり、草花が生え、今まで隠れていたのか、僅かに生き残っていた動物達も、地上に姿を見せるようになった。
それでようやく、世界中が彼の言う事を信じた。
地球規模を復活させる取り組みは世界規模で行われ、そのお陰か、地球は以前よりも緑と命に溢れた姿を取り戻したのだ。
そうしてその日、雨は完全に、やんだ。
セカイは雨に包まれていた。
だけど今、セカイは微笑んでいる――。
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