第一章・―やまない雨―

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 最初の内は、世界中の偉い人達や学者さん達、見識深い人が沢山集まって、何が何でも雨を止ませようとした。  それはもう、必死になったけれど、全部の案が徒労に終わって、このセカイの人達が、潔く諦めた日に、ようやく、天気予報というコンテンツが消えた。  ついでに、天気って概念すらも。  あったって仕方ない。  だって明日もずっと、セカイは雨――。  雨は憂うつか、はたまた晴れやかなのか。  大嫌いなんだけど、止まなくなったのだから、受け入れるしかないのかな。  鈍色の、分厚い雲が支配する空を見上げて、降り注ぐ雨粒に目を凝らす。  セカイは何とか順応して、雨がやまないならやまないなりに、生きていく(すべ)を身につけていった。  雨でも強い食物。雨に負けない素材。雨を利用する資源。  人間って、意外と強い。  ……なのに、いつまでもあの日を失ったまま、雨も受け入れられないで、ずっと生きている。  弱い。  ……弱い、な。  どうしてこうなったのかな。いつからだろう。悪かったのかな。誰が? ねぇ。  お願いだから、かえってきて、もう一度抱き締めて、笑いながら、「もう二度と離さない」って約束してよ。  ひとりぼっちは、つらいよ……。耐えられないよ。  かなしい。悲しい。哀しい。つらい。くるしい。  もう、生きていく自信なんて、どこにもないんだよぅ。  雨は意外と便利。  流れる涙も、誰にも気付かれないまま、包んでくれる。  この、やまない雨と一緒に……。
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