第一章・―やまない雨―

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 ずっと待ってるのに、誰にも気付かれない。  なくした日にいた交差点で、ずっと待ってる。のに、誰にも気付かれない。  雨、雨、雨。  皆お気に入りの傘を携えて、いつまでも変わらない日常を淡々とこなす日々を繰り返していく。  取り残されたまま、この場所で、誰にも気付かれないまま、ひとりぼっちで、ねぇ。  こんなに寂しい事って、ないよ?  どうしてこうなったのかな。いつからだろう。  早く、迎えに来てよ。  待ってる。  待ってる。から。  いつからか、誰かが言った。  やまない雨は、きっと、誰かが悲しみに打ちひしがれて、泣いているせいなんだって。  その悲しみを止めてあげればセカイはまた、天気を取り戻せるんじゃないかって。  ……。  きっと原因は……。  だって、セカイは雨に包まれている。  その日からずっと。  泣き始めた日にずっと。  ……。  セカイの人が気付く。  そうして、宥めにかかる。少しでも悲しみを、苦しみを、痛みを取り除けるよう、必死に必死に、労りを重ねて、だから、徐々に、笑えるようになってきた。  段々と、ネガティブな感情から解き放たれていくのが分かるの。  ありがとう。  ありがとう。  優しい、人達。  セカイに雨は似合わない。  もう、泣いている必要はない。  ようやく笑える日が、きたんだ。
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