若旦那

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 僕は考えました。僕には本の良さがちっと分かりません。なぜって、本というやつは、味もしなければ、固いし、爪を研ぐこともできません。僕にとって本とは、タンスの上によじ登るための道具に過ぎません。しかし、若旦那にとって本とは、何よりも大切なものです。  ペラッ。  前に一度こんなことがありました。僕は若旦那の部屋に入り、いつものように若旦那の勉強机の上でお昼寝をしようとしました(若旦那の机の上は、僕のお気に入りスポットなのです)。でも、若旦那の机の上には何冊かの本が平積みされていました。僕は考えました。もし、この本を退かすことができれば、いつものようにお昼寝できる。でも、僕の手では本を持ち上げることはできない。 (仕方ない。本には悪いが、床に退けてしまおう)  そう思うと僕はぴょんとジャンプをし、机の上に着地しました。そうして、自分の寝場所を確保するために、前足で本を床に落としました。  ガチャガチャ。
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