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自分たちの様に公務員になってしまうと、上からの命には背くことがあまりない。従うしかないのだ。 「剣道部、現顧問は宮本先生。で副顧問はー」 宮本は少し嫌な予感がして眉を顰めた。 「江口先生、お願いします」 はあ、と気のない返事をする江口は、頭をぼりぼりと搔いていた。 すぐさま隣の原が宮本に聞いてくる。 「新任の癖に剣道部なんて、経験があるんすかね?」 さあ、と宮本は答える。 頭が真っ白になっていて、とても自分では処理に負えない。どうして大嫌いなやつと一緒になってしまったのかと、後悔の念しかなかった。 職員室のピリピリとした雰囲気の中、次々と副顧問や変更の教師が伝えられていく。 宮本はその内容が殆ど頭に入らなかった。 「宮本先生」 声を掛けられて振り向くとそこにはズボラ教師が立っている。 宮本はついに来た、と何故か緊張する。 あれほど嫌っていた相手が、徐々に近づいて来るからだ。 スーツはグレーで、ネクタイはしているがあまりにもルーズだった。そのスタイルは、宮本には何一つ理解できないのだった。 「あー、なんか副顧問みたいで。俺何も知らないんでよろしくお願いします」 この男でも挨拶ができたのだ、と宮本は不思議に思った。 「・・・こちらこそ」 ぶっきらぼうに答えると、江口は言う。 「まァ、適当に顔出すんで。何かあったら言ってください」 手を挙げて、即座に身を翻す江口。 それを見つめて、宮本はため息を吐いた。 挨拶は評価できるが、最初から適当とは。国語の教師のくせに、どんな考えの元行動しているのか、分からず理解に苦しむ。 所詮物理の教師である自分には理解できない人間なのだろう、と思い込むことにした。 思えば江口を嫌いだと気づいてから、毎日奴の事ばかり考えている気がする。 どうかしている。 宮本は会議の後の重たい気分を引きずりつつ、自分の教室に入って行く。 「副顧問、誰になったんです?」 教室に入ると、クラスの男子が聞いてきた。 この生徒は剣道部なのだ。 「ああ・・・江口先生だよ」 「えっ、あの先生、剣道経験あんの?嫌だな~」 露骨に嫌な顔をする生徒を羨ましいと思いながら、宮本は生徒たちに席に着くよう促す。
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