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上泉から受けた誘いの内容は、守が危惧するようなものでは無かった。
「平たく言うと食事の誘いだね。もちろん二人きりじゃないぞ」
「は……はあ」
「実は定期的に食事に行くメンバーというのがいてね。君もぜひ来ないか、というお誘いなんだ」
「メンバー……」
「もちろん食事代は僕持ちさ。まあ、僕はこう見えてシャイな性質でね。社内の若い人たちとコミュニケーションをとる大切な場なんだがね」
「そ、それはつまり……」
ごくり、と思わず守は息をのんだ。
ニヤッと上泉は笑みを浮かべた。
「実はね、千早君が是非君を誘うべきだと僕に言って来てね」
「……千早さん? その、お仲間に入っているんですか?」
「そうだよ。明朗快活で、実に気持ちのいい女性だね、彼女は」
守は上泉の言葉に無言で何度も頷いた。
「まあ、考えてみてくれたまえ」
ポン、と肩を一つ叩いて上泉は去っていった。その背中を見送りながら、守はしばらく動けなかった。
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