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そして当日がやって来た。
食事会は、山奥にある掘っ立て小屋のような場所で開かれた。
ここまでは上泉がチャーターしたマイクロバスで時間をかけてやってきた。辿り着いた時には、みんな腹ペコだったから、出来上がった料理が出た時にはみんな大いに盛り上がった。
そして空に月が出る頃、食事会は盛況のうちに幕を閉じた。
「いやあ、素晴らしい料理だったね」
上泉は爪楊枝で歯をせせりながら、マイクロバスに向けて隣を歩く楓に声をかけた。
「ええ、ほんとに。お腹いっぱいです」
楓もお腹をさすりながら、満足そうに微笑んでいる。
「にしても、結構な量だったねぇ」
「ええ、みんなでも結局食べきれませんでしたね」
「まあ、足りないよりは良いかな。残りはまあ、どうにか処分してくれるだろ」
「ですね」
言いながら楓が周囲を見回せば、みんな口々に料理の感想を言い合っている。
別段不満は無かったようだった。
それどころか称賛する声が多かった。
誰もが興奮気味なのは、初めて食べた味だったからだった。
それを見ながら、楓はしみじみと言った。
「高坂君を誘って……良かったですね」
「ああ、全くだ。おかげで会も盛り上がった」
「専務はどうでした? 高坂君」
楓に尋ねられた上泉は、月を見上げながら呟いた。
「そうだなぁ……」
それからくるりと楓に視線を戻して言葉を続けた。
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